三角港キャノピー

 

プログラム

日除けキャノピー

 

コンセプト

熊本県宇城市三角町。JR熊本駅から観光列車であるA列車に乗って約40分、終着駅が三角駅である。観光列車を降りて駅に着くと90年代に出来た海のピラミッドと大きな駐車場の風景が整備前の状況であった。ここを地域の方々が活用でき、駅から天草方面へのフェリーへの乗り換え待ちの観光客が滞在できる公園、駅前空間へ整備しようというのが、「三角港港湾海辺空間創造工事」である。その整備の中の三角駅からフェリー乗り場までを誘導するための通路キャノピーが本プロジェクトである。幅5m、高さ4.5m、延長は200、柱スパンは7.5m。海のピラミッドを囲うように配置された円弧状のキャノピーは、今回の計画では駅前までの1/4円の状態で終わっているが、中長期計画では延伸され半円状となり、広場全体を囲うことになる。円弧の平面計画を持ったキャノピーをどのようにシンプルに設計するかが求められた。条件としては、三角駅からの海への眺望を遮らない高さに屋根を設定すること、将来のバス停留所の屋根を兼用する可能性を考慮することから、屋根高さ4.5mとすること以外は、比較的自由度があった。まず考えたのは、海のピラミッドの幾何学的な強い造形、有機的な天草のしまなみの曲線の風景とのバランスから、シンプルでフラットな屋根とすることとした。次に支柱の配置だが、屋根と支柱が一体になる案、支柱が地面と一体になり屋根が浮く案の2つの方向から後者を選択。支柱頂部に照明を設置、素材に鋳鋼を採用し、港の風景を演出したいと考えた。夜ひっそりと真っ暗な海辺の風景の中で、支柱の照明が点状に連続する静かな風景を想像したからだ。昼間は、反対に支柱が地面から重厚感を持ってそびえ、屋根が浮いている。設計と並行して地域を交えた利活用ワークショップも行われてきており、供用後は地域の様々なイベントで活用されることが期待されている。

 

特徴

 

構造システムとしては、支柱頂部をピンにして、円弧の平面線形を利用して全体で構造をバランスさせるリングガーダ−の構造を採用することとした。断面構成は、幅4.5mで支柱は屋根中央よりも円弧内側に偏心させた。通路の屋根であると同時に、イベント時の物産品販売のスペースとして利用することが想定されるという機能上の理由と、構造的には内側に偏心させることが有利に働くという両側面を一致させたことによる。結果、短手方向に3m近い片持ちでありながら、幅4.5m長さ7.5mの屋根を支えるという風景を実現している。屋根は、厚さ12mmと9mmの鋼板からなるサンドイッチパネルで構成。内部のスチフナは短手方向のみの配置とし、飛行機の羽のような構造とした。このパネルが主桁であり屋根材である。構造部材がそのまま仕上げとなり、シンプルな屋根形状はそのまま構造が表現となる。パネルは柱スパンの7.5mごとに分割した26パネルを工場製作とし、現場が港であることから海上輸送で現地まで運搬することとした。支柱を立て込んだ後、仮設のサポートを使用しながらパネルを柱の上に並べ、柱頭部ピンを固定、パネルごと現場溶接でつないで仕上げた。工場製作によって現地工事が少なかったことが、天候に左右されがちな短工期の現場で、精度高く出来上がった要因の一つである。ディテールが少なく、極端にシンプルなこのキャノピーは、造船技術による高い製作および施工技術と設計者との意思疎通がスムーズであったことが大きい。照明カバーのガラスも光学ガラスというレンズに使用する特殊ガラスを使用し、鋳造の支柱の塊の物質感と調和させていたり、支柱足下をスカート状のディテールとし舗装と擦り付けるなど細かい部分の配慮を行うことで、一見何の変哲も無いようで、どこか他とは異なる印象の創出を狙っている。

 

 

設計期間 | 2013-2014

施工期間|2015-2016

クライアント|熊本県

総工費|キャノピー 2.1億円 基礎 0.4億円

規模|延長200m,幅5m,高さ4.5m

意匠・構造 | Ney & Partners

所在地 | 日本, 熊本 / Japan, Kumamoto

クレジット | Ney & Partners